雇用契約書に所定労働時間の記載があるけど、いまいちピンときませんよね。
詳しく知らなくても大きく困ることはないですが、曖昧な知識のまま働くと残業や有給で損する可能性があるので注意が必要です。
そこで今回は、所定労働時間と法定労働時間の違いについて紹介します。ぜひ参考にしてください。
【本記事で知れること】
所定労働時間とは
所定労働時間とは、就業先(企業)が定める労働時間です。
1日8時間、週40時間までと決まっており、休憩時間を引いた労働時間が所定労働時間となります。
法定労働時間との違い
法定労働時間とは、労働基準法で定められた上限となる労働時間です。1日8時間、週40時間までという点は所定労働時間と同じです。
それぞれの違いを簡単にまとめたので、見てみましょう。
項目 | 所定労働時間 | 法定労働時間 |
---|---|---|
定め先 | 就業先となる企業 | 労働基準法 |
上限 | 1日8時間、週40時間 | 1日8時間、週40時間 |
労働時間の概要 | 上限を超えなければ自由に決められる 例:1日4時間、週20時間など | 法で定めた上限に過ぎない |
要は、法定労働時間を超えなければ企業は自由に所定労働時間を決められるってことですね。
法定労働時間を超えると時間外手当として割増賃金(1.25倍)になるので、覚えておきましょう。
参考元:e-GOV |労働基準法第34条
雇用形態別の所定労働時間
続いて、雇用形態別の所定労働時間について解説していきます。
法定労働時間はどの雇用形態も同じなので、念頭に置いたうえで見ていきましょう。
正社員・契約社員の場合
正社員・契約社員の所定労働時間は、上限内で企業が決定します。
【正社員・契約社員の所定労働時間の例】
- 1日7時間勤務の週休二日制(週35時間)
- 1日8時間勤務の週休二日制(週40時間)
- 1日10時間勤務の週休三日制(週40時間)
③は1日8時間の上限を超えてしまいますが、変形労働時間制を採用している企業だとOKとなっています。
ただ、上記の労働時間を見て「自分の会社は週40時間を超えているんだけど」と疑問に感じた人もいるのではないでしょうか?
実際に、1日8時間労働の週休1日制で週40時間以上働かせている企業が少なくありません。
週40時間を超えたら時間外労働なので、本来であれば割増賃金となります。仮に週48時間勤務と雇用契約書に記載があっても、法定労働時間が採用されます。
就業規則・雇用契約書を確認し、明らかにおかしい場合は労働基準監督署に相談しましょう。
就業規則や雇用契約書を交わしていない場合は、別企業へ転職した方が無難です。もっと待遇の良い会社はいくらでもあります。
派遣社員の場合
派遣社員の場合も、正社員・契約社員と同様の所定労働時間です。しかし、派遣の場合は派遣元と派遣先の両方で所定労働時間が定められます。
よって、雇用契約書と就業規則の所定労働時間が異なる場合がありますが、一般的には派遣会社が同じになるよう擦り合わせてくれています。
時間外労働が何時間からになるのかも変わってくるので、就業前に確認しておきましょう。
アルバイトの場合
アルバイトはパートタイム労働法により「短時間労働者」として扱われるケースが多いですが、所定労働時間の上限はその他雇用形態と同じです。
あとは、企業次第となりますね。1日4時間勤務の週3~4日で計算している場合もあるし、フルタイムで雇用しているケースもあります。
同一事業所で人それぞれ所定労働時間が異なる場合は労働契約書に明記されているので、確認しておきましょう。
所定労働時間の注意点
所定労働時間には、いくつかの注意点があります。全てを理解し、本当に働いていいのか決めましょう。
残業が割増賃金とは限らない
所定労働時間を超える残業は、必ずしも割増賃金になるとは限りません。
原則として、無条件に割増賃金になるのは法定労働時間を超える場合です。そのため、所定労働時間が7時間で1時間残業しても、割増にはならないってことですね。
とはいえ、労働契約書・雇用契約書や就業規則に「所定労働時間を超える労働は割増賃金となる」と記載があれば支払い義務が発生します。
特に、所定労働時間が短いアルバイトやパートはトラブルになりやすいので、あらかじめ聞いておきましょう。
有給の取得日数に影響する
そもそも、有給は所定労働日数で取得日数が決まります。所定労働日数が曖昧だと、正しい有給がもらえないかもしれません。
有給の取得ルールは、以下の通りです。
- 所定労働日数週5日以上かつ年217日以上…所定労働日数の8割以上勤務かつ半年以上継続勤務
- 所定労働日数週4日以下かつ週30時間未満…半年以上継続勤務(週の所定労働日数で取得日数が変動)
週5日以上なら半年で10日、週4日なら7日、週1日なら1日と大きく変わってきます。
損をしないためにも、所定労働日数が明記されているかチェックしておいてください。
必要な休憩時間が変わる
所定労働時間とは関係ないですが、6時間以上8時間以下の労働の場合、最低45分の休憩が必要です。
さらに、8時間を超える場合は最低1時間が義務付けられています。
一方で、6時間未満だと休憩を与える義務がなく、ぶっ続けで働いても法的にはOKとなっています。
「休憩なしって違法じゃないの?」と考える人もいるはずなので、労働時間によって変動すると覚えておきましょう。
まとめ:自分の所定労働時間は知っておこう
所定労働時間は、人それぞれ違います。雇用契約書や労働契約書などに明記されているので、自分の所定労働時間は把握しておきましょう。
また、小規模の民間企業や小企業、個人経営の店舗なんかは所定労働時間が曖昧だったりします。法的にいうなら、デメリットの方が強いです。
とはいえ、従業員を思いやる気持ちや人情味なんかは、民間だからこその強みともいえます。
働きやすいと感じるかどうかは相性の部分もあるので、法と天秤にかけながら自分に合った働き先を見つけていきましょう。
コメント